Short break  /2
 
 
 
 
「うーん、いいお天気」
 大きく伸びをして、胸いっぱいに空気を吸い込むレオナはいつもの重圧から開放されて本当に気分が良さそうだった。
(ま、息抜きになんならいっか)
 その様子を見てポップはそう思った。後に怒られるのは主に自分であるのはわかっているが、その手の事は右から左に受け流すのも得意である。 それにパプニカ三賢者あたりはポップがレオナの我がままに巻き込まれたとよくわかってくれるだろうから、あちらの説教は自分には来ない筈だ。
(ついでに俺もひとやすみ、といくかねぇ)
 ふうと小さく息を吐き、次いで空と緑溢れる森を眺めて微笑みを浮かべる。
 限界線ぎりぎり一杯・・・・とまではまだまだいかぬものの、城に押し込められて駆け引きや策略に明け暮れる日々というのはそれなりにストレスの元である。 戦いの中でも子ずるく頭を働かせ、パーティの頭脳としてやってはきたが、それにしても人同士の欲と権力が絡むとなると話は別であった。
 本来ならば自分も師や父同様、王家などというものにはあまり係わり合いを持ちたくない。時にはちやほやされるのも良いには良いのだが、基本的には権力欲など薄いのだ。
 そしてギラギラした欲望の渦を見ると何とも興ざめというか、うんざりもする。 まだまだ俺も青いのね―と、少年の域をまだ出てすらいないというのにポップはそんな風にも考えていた。
 けれども――そこがレオナの生きる場所である以上、今ここに居ない親友の代わりに彼女を支えるのは自分しかいない以上、それもまた仕方ない事であるのだ。
 ただ、もしあいつが戻ってきたとしても――その手の事が得意とは言えない奴なので結局はフォローし続けるしかないのだろうか…というのは少しばかり憂鬱を誘う事態であるのだが。 まぁそれも戻ってきてから考えれば良い事である。レオナとは少し違う方向ではあるものの、ダイもまた吸引力というかカリスマ性と呼ぶべきものを有している。 周りがどうこう気に病む前に、周囲をいつの間にやら巻き込んでどうにかしてしまうという予測もできる。 ただ、その巻き込まれに最も自分が関わりそうだ――というのも、これもまた否定できなそうな事実ではあるのだが。――まぁそれもこれもどれもこれも仕方が無い、のだろう。 勇者などという生物と関わってしまったのが身の不運という事だ。
 青い空。静かな海。心地良い風。
 随分と御無沙汰だったものばかり。そして曲がりなりにも傍らには美女予備軍(当人を前には決してそうとは言えない)が居るわけで、男としては喜ばしい状況であるのだろう。
 例え、その美女予備軍――(まぁ素直に美少女とすれば取り合えずは問題ないのだが)――が、ポップの事を便利アイテムと認識している感があるにしても。 我侭三昧をこの後並べ立てられるのだろうとしても――ま、そういうのも実は嫌いではない。
 
「ねぇっ!ポップ君!お腹空いたんだけどっ!!」
「・・・・・飯食ってから来りゃ良かったんだよ」
「そんな事言ったって、思い立ったら吉日って奴でしょ?」
「そりゃ場当たり行動って言うんだ。なーんも旅の準備をしないで飛び出てくるなんざ、無謀もいいとこだぜ?」
「ちゃんとポップ君常備したもの」
「・・・・・・・・・・さいですか」
 やはり俺サマお便利アイテムなのね―と苦笑も漏れるが所詮はそんなものである。ま、これぐらいの甘えは軽くこなさなければレオナと付き合ってなどいられない。 将来的にはこれがダイの役割になる筈で――多分なる筈で――と思いたいのだが、何か甘え小僧が増えるだけで余計に負担が増すような予感がしないでもないポップだった。
「ま、魚か肉でも取りますかね。木の実だけじゃ・・・・」
「いや。お腹空いてるもの」
「・・・・はいはい。はしたなくはございませんかね?女王サマ?」
「育ち盛りなのよ」
「・・・・知らねーぜ。余計な所が育っても」
そ・ん・な・と・こ・ろ・そ・だ・て・ま・せ・ん・っ・!
 一言一句を区切ったドスの効いた声。これがマァムだったら問答無用で殴り倒されてるな―と思う癖に口に出すポップは大概懲りない性格だ。
「あ、んな騒いでっから、迎えきちまった」
「え?嘘。もう?・・・・・・・なーんだ。クロコダインじゃない。久しぶりだわ〜。でも迎えが来たのって私のせいじゃなくてポップ君のせいじゃないかしら」
「俺ぇ?」
「相変わらずの着地だったから、ねぇ?」
「・・・・・・・・・・・・・ま、否定はできねぇけど」
 そこらあたりを追求されると反論できぬポップだ。
 ふうと息を吐き、森の中から駆けてくる姿を見つめ、おっさんも元気そうだな―と懐かしく思いつつ、その首根っこにしがみついた鼠の姿を見た途端、げ、チウまで来やがった。 煩くなんな、と少しばかりうんざりとしつつ、それでも懐かしい顔ぶれに浮かぶ笑みは抑えられなかった。
 
 
 
 
[ date: 2005.08.01 ]
 
 ナンバリング振ってみたり(←最初は中を振るなど悪足掻きもしてみた)
 
お気に召しましたら一言どうぞ
 
 
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